TSUNAMI

災害時、怖いのはパニックでなく「大したことない」心理

なぜか。広瀬さんによると、非常事態が迫った人間が逃げない理由は大別すると、2つあるという。1つは逃げようとしても動けない、もう1つは、逃げようとしない−だ。
前者の理由として広瀬さんが指摘するのは、頭が真っ白になって固まってしまう“凍りつき現象”。米中枢同時テロで、頭上に飛行機が突っ込んだ高層階の人は避難行動に移るまでの時間に平均で約7分を要したのに対し、中下層階の人は2〜4分程度それより早かったという。
<中略>
根底にあるのは、人間の「安心したい」という心理だという。例えば、火災警報機が作動しても「誤報かいたずらだろう」「火事が起こるはずがない」と考え、「異常ではない」という判断に行き着く。「こうした異常だと思いたくない心理的な動きを“正常性バイアス”と呼びます。さらに、『安全が普通』ともいえる先進国の人は危機察知能力が低く、こうしたバイアスがかかりやすい」(広瀬さん)

関係者が異口同音に指摘するのは、「逃げることを躊躇(ちゅうちょ)せずに」ということだ。広瀬さんによると、「これまでの災害を考えても、逃げて現状よりさらに危険な状況に陥ることはほぼないと考えてよい」という。
 また、重要なのは災害の危険性を十分に認識することだとも指摘する。「過去の災害情報もわが身に置き換え、被害を想像することです。常に『逃げ出す自分』を想像しておくことで、フリーズ状態となっても適切な行動を素早く取れるようになります」

逃げることを躊躇しない!