たのしい写真

たのしい写真―よい子のための写真教室

たのしい写真―よい子のための写真教室

堀 江:(前略)写真で最も恐ろしいのは、写された人がその時間にそこにいたという事実だと思うんです。過去を遡るということではなくて、過去がいきなりそこにある。同時にその過去はもうない。

ホンマ:よく写真って動きが撮れないから時間がない、と言われますが、逆に時間しかないんですよね。

堀 江:そう思います。物書きは時間が写っている瞬間を定着させる手段を持っていませんから、過ぎていく時間を追いかけるように言葉にしている。どんなにやっても写真の時間にはたどり着けない。言葉を語って何かを作ろうとすると、どんどん時間が経ってしまう。書きはじめた時間に戻ることはできません。写真だったら1週間前に撮った時間は、そこに定着されている。文章は現実の時間を取り逃がすことしかできないんですよ。だからこそ、できあがった作品には、べつの時間が流れていなければならないと思うんです。